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〈北斎中毒〉 会田誠と佐藤順子

会田誠は「北斎中毒」のように北斎を模写していた時期があるという。中毒までいかなくても、北斎が好きな絵描きは多い。北斎は「絵中毒」(会田)だったというのだから、北斎自身が北斎中毒だったわけだ。奈良美智は工房の壁に写楽の《三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛》を貼って、浮世絵の絵師、彫師、摺師の三役を兼ねて、ひょうひょうと描いている。Youtubeの奈良美智の制作風景を見るのが好きだ。また、マチスは友人のマルケを「わが北斎」と呼び、窮屈なドミニク・アングルのデッサンと比べて、北斎を画狂老人(vieillard fou de dessinデッサン狂)と呼ぶことに不都合はないと絶賛している。

こんな大家とアマチュアの画家を同列にならべるのはどうかと思うが、佐藤順子の北斎中毒は誰にも負けない。それだけではない、二人とも北斎漫画だけではなく、北斎の春画が好きだ。会田誠には、北斎の《蛸と海女》のパロディ作品《巨大フジ隊員VSキングギドラ》があるし、佐藤順子には、《北斎春画オマージュ》のシリーズがある。と言っても、会田誠の《巨大フジ隊員VSキングギドラ》は今や現代美術の愛好家なら知らぬ者はいないと言っても良いが、佐藤順子の《北斎春画オマージュ》の方は、Twitterに一部アップしただけだ。しかも、岡田斗司夫的「美術史」から見れば、100年後200年後に今の時代を象徴する作品になれるかどうかを考えれば、いうまでもなく、《巨大フジ隊員VSキングギドラ》がマンガ・アニメの「おたく時代」の代表作として残るだろう。

それでも、佐藤順子が会田誠と並ぶ資格があると思うのは、会田が北斎の「海女の白日夢《蛸と海女》」を鬼畜系のパロディにしたのとは対照的に、佐藤の《北斎春画オマージュ》は、北斎春画はポルノグラフィーではなく、「モデルニテ」の世界を描いた北斎漫画の一部だということを見せてくれたからだ。しかし、そんな遠回りをする必要もない。今まさに旬であり、しかも、誤解されることも多い会田誠を、女性画家として理解しているのは誰よりも佐藤順子だろう。

佐藤順子の会田理解はこれまでの私のブログを読んでもらうとして、ここでは、ボードレールの「モデルニテ」の視点から、会田誠と佐藤順子の類縁性を考えて見たい。モデルニテは、ボードレールがコンスタンタン・ギース(1802-1892)について書いた美術批評『現代生活の画家』で使った言葉である。「現代性とは、一時的なもの、うつろい易いもの、偶発的なもので、これが芸術の半分をなし、他の半分が、永遠なもの、不易なものである。」 人々はルーヴル美術館に行くと、一目散にラファエロの前に行くが、現在の風俗画にこそ意をそそいで欲しいとボードレールは言う。衣裳、化粧、仕草にはいつの時代にもその時代の流行がある。

平成の最大のモデルニテは「ルーズ・ソックス」だろう。会田にも佐藤にもルーズ・ソックスを描いた作品がある。会田の作品は、センター街にたむろしているような女子高生を描いた《群娘図'97》で、佐藤の方は、北斎漫画の町人の《喧嘩》を女子高生の喧嘩に差し替えたパロディ作品だ。

以下、会田誠の《群娘図'97》のリンク先と、ニョウボの《北斎喧嘩》のパロディ作品《ルーズ・ソックス》と《ビキニ》の二作品のTwitterをコピペしておいた。その後に簡単な解説を加えている。まず、絵をよく見てほしい。


     *     *     *     *     *


(1) 会田誠の《群娘図'97》のリンク(

(2) 《北斎喧嘩》のパロディ:ルーズ・ソックス

(3) 《北斎喧嘩》のパロディ:ビキニ

*     *     *     *     *     *


《群娘図'97》は、作品集『MONUMENT FOR NOTHING』の年譜に「・・・何よりも、必ず消えることが分かっている風俗を普遍を旨とする美術で堂々と扱う勇気とか・・・・」と書いているように、まさに会田誠はボードレールのいう「現代生活の画家」なのだ。この絵の主題は、「東京の女子高生と地方の女子中学生の対比」というのだから、ルーズ・ソックスだけが主題というわけではない。他にも、白いスクールベスト、ミニスカート、ヤンキー座り、茶髪、ガングロ、タバコ、携帯など、さらには、ブルセラや援交が社会背景としてあったのだろうが、この作品が注目を浴びるようになると、《群娘図’97》は《ルーズ・ソックスの絵》と言われるようになる。それほどルーズ・ソックスはモードとして強い印象を残した。

《北斎喧嘩》のパロディ(ルーズ・ソックス)は、もともと「ルーズ・ソックス」を描くために、北斎の《喧嘩》のパロディにした。町人の仕草身振りがわかるように左の二人を残し、喧嘩をけしかけている女子高生四人をルーズ・ソックスにした。会田さんの《群娘図'97》のことはもちろん知らなかった。佐藤は、初めてルーズ・ソックスを見たとき、「これは残る」と直感したそうだ。今は廃れたけれど、いずれ復活すると言っている。ルーズ・ソックスは日本人によく似合う。観光客誘致に使えないものか。

言い忘れたが、《群娘図'97》と《北斎喧嘩》のルーズ・ソックスはタイプが違う。佐藤の方はファッションとしてのルーズ・ソックスで、可愛いジャポニスムだ。それに対して、会田のハイソックス・タイプのルーズ・ソックスはブルセラ援交のファションだ。そう思って、あらためて《群娘図'97》を見ると、写真を参考にしたのだろう、表情がリアルで、いろいろ描き込み過ぎて、会田の持ち味が生かされていない。社会批判が眼目なのだろう。対比すべきモチーフをワンショットで撮った写真なら、平成の傑作として残ったに違いない。

《群娘図'97》は、東京の女子高生と地方の女子中学生の対比が主題だというが、会田には地方から修学旅行に来た女子中学生に特別の思い入れがあるはずだ。上野公園で「失禁パフォーマンス」をする《上野パンタロン日記》の背後には修学旅行の女子中学生が笑って騒いでいるのが映っている。この女子中学生たちが後に《滝の絵》の「スク水」の少女たちになるわけだが、そのためには紆余曲折を経る道のりがあったに違いない。

《滝の絵》は「中学1年から始まった僕のある種の描画(美術予備校から始まった“美術”ではないことが重要)におけるひとつの集大成を目指した」と言っているのだから、明らかに、中学1年のときから始めた、美少女の写真を使っての自家製自家用ポルノの制作のことだ。会田は同時に公募団体系の絵画教室にも通いはじめているのだけれど、正確なデッサン力は身につけたが、自分の魅力的な線はひけなくなったと会田は告白している。

《滝の絵》は、もはや、ポルノグラフィーとしての美少女画ではない。これは会田誠の芸術上の変化ではなく、40歳という年齢の所為だ。画面中央の少女が振り返ってこちらを見ているのは、会田誠の視線に気づいたのだと、まえに、書いたことがある。それでも、《滝の絵》が「ポルノグラフィー」をまぬかれているのは、少女が、北斎漫画の「人物づくし」になっており、一人ひとりに「物語」があるからだ。この「物づくし」こそが北斎漫画の江戸の「現代生活の絵画」の方法なのだ。《群娘図'97》は尾形光琳の《燕子花図屏風》の横一列の構図を使ったというのだが、《群娘図'97》には《燕子花図》の「構図としての余白」がないのが残念である。

北斎漫画の《喧嘩》も「町人づくし」になっている。「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるように、物売りが天秤を放り投げて喧嘩に加わり、座り込んで見物と洒落こみ、指差してあれこれ品評したり、棒を持ってうしろから応援したりと、まさに江戸っ子の「喧嘩づくし」だ。会田の《滝の絵》と佐藤の《北斎喧嘩》を並べてみれば、二人とも北斎の影響を受けた「現代生活の画家」であることが分かる。しかし、両者は対照的でもある。《滝の絵》は胸が小さいスクール水着の女子中学生、《北斎喧嘩》はビキニ姿のギャル。スクール水着の似合う女子中学生はすでに居ない。ビキニが似合う男の子のようなギャルもいない。

こんなことを言うと会田誠さんに怒られるだろうが、二つの作品を並べると、まるで、示し合わせたように、ひとつの作品になる。見ていて飽きることがない。






スレッド:art・芸術・美術 / ジャンル:学問・文化・芸術

2016.02.17[Wed] Post 10:23  CO:0  TB:0  北斎  Top▲

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