伊東豊雄『建築|新しいリアル』展(東京オペラシティ)★★☆
建築は芸術ではなく、せいぜいのところ車や便器と同じ実用品のデザインである。
ポストモダンの空騒ぎはもともと建築から始まったものだ。モダンという概念は、建築でははっきりしている。ガラスと鉄とコンクリートで合理的に設計された建築で、それがつまらないから、もっと装飾や無駄なものをくっつけて面白くしようというのがポストモダンだろう。
それなら建築に止めておけばいいものを、なにを勘違いしたのか、建築が芸術だと思いこんでいるものたちが、ちょうどモダン建築と表面的に似ている(幾何学的)抽象画やミニマリズムを巻き込んで大騒ぎをしたというのが真相だろう。
この展示場にはポストモダンの怪しげな理論が皆無であるのは気持ちが良い。理論は実に明快である。ポストモダンというよりモダンである。「規則的で無機質な空間から複雑で有機的な空間へ」とチラシにある。たしかに曲線はある。しかし、その曲線は
フンデルトヴァッサーのような装飾的な曲線ではない。力学的に計算可能な曲線である。
曲線は必ずしもポストモダンとはいえない。アーチは古代からある合理的に計算された(モダンな)建築術である。ただ、構造を複雑にして、石や煉瓦の代わりに鉄とガラスとコンクリートで、グリッド(直線)構造が使えるようになったのが近代建築だ。
わたしには、これを芸術として評価することはできないし、建築として論じる知識もない。ただ、会場にあった「エマージング・グリッド」を体感させるという曲面の床を歩いて見た。たしかに、これまでにない奇妙な身体感覚を味わうことができる。遊園地に作って鬼ごっこでもしたら楽しかろう。
白い曲面はスキー場の凹凸のように見え、視覚的には寒いのだが、体感的には暖かいので、そのちぐはぐな感覚が面白い。
こんな床(実際は斎場の屋根だそうです)が実用になるのかどうか、雨水が溜まらないのか心配だが、デザインとしてはとてもシンプルで美しくモダンに感じました。