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【上野の森美術館大賞展】③: 佐藤順子《1年D組》と会田誠《灰色の山》 詰襟と背広

柿栖恒昭は絵画表現を「表情表現」と「その他の表現形式」の二つに大きくわける。そして、その他の表現形式というのはセザンヌの「モーメント表現」、マチスの「パターン表現」、マグリットの「意味表現」、ジョーンズの「素材表現」の四つで、どれにも表情表現がなく、無表情だ。表情があると自分たち独自の表現形式の邪魔になるからだ。(注1)

佐藤順子はマチスが好きだという。マチスの好きな女流画家は多いけれど、マチスを理解している画家は少ない。三岸節子の赤は表情があるし、辰野登恵子の抽象画には重さがある。

佐藤順子が最初に気付いたマチスの「無表情表現」は色彩ではなく、顔と手足の省略だった。顔はへのへのもへじになり、しまいにノッペラボウになった。手足も省略され、指は数本の線になった。顔と手にはもともと強い表情があるので、視線が惹きつけられるのを避けるためだということはすぐに理解した。

佐藤の《1年D組》と会田の《灰色の山》の顔を比較してみよう。《1年D組》の新入生は「写真と記憶」に基づいて、声や仕草を思い出しながら描いた。当然、強い表情表現がある。それに対して《灰色の山》のサラリーマンの顔はノッペラボウだから、表情はないと思われる。ところが、そうではない。顔がないのは「サラリーマンには個性がない」ことの表情表現であり、ドブネズミ色の背広も同じことだ。ノッペラボウや灰色の背広はそういうサラリーマンの悲哀の「表情」なのだ。

《灰色の山》は近づいて見れば、顔のないサラリーマンの死体であり、離れて見れば朦朧体の山である。どちらも「表情表現」の絵画である。サラリーマンの死骸は三次元的に描かれており、ボリュームがある。死体というより酔っぱらいに見える。一人ひとりに表情があり、自堕落な魅力さえある。当然、観者の視線を惹きつける。離れて山を見れば、霧の中に霞んでいる朦朧体の山は瞑想を誘う深淵な風景だ。

《1年D組》の集合写真の52名にそれぞれに名前があり、個性がある。しかし、我々の視線は楽しげに生徒から生徒へ流れていく。黄色やスカイブルーの私服にも、黒い詰襟にもとどまってはいない。誰もが紙の着せ替え人形のように平たい。《灰色の山》のサラリーマンのように三次元でもないし、重さもない。手足がお互いに絡まることもない。《1年D組》は観者の距離が遠/近二つに分離することはない。視線は心地よく新入生の黒やスカイブルーや黄色の上を流れていく。

《灰色の山》と《1年D組》を比べれば、完成度は比較にならぬほど《灰色の山》が優れている。おそらく会田は日本画の中興の祖といずれ言われるようになるだろう。それに比べ佐藤は未熟であり、絵画への復活の兆しが見えたのも、すでに繰り返しのべたように、余白の塗り残し、黒い詰襟と女子の私服の3対1の比率、汚れを消さなかったことなど偶然が重なったからだ。勿論その偶然を生かせたのは、佐藤が普段からマチスが好きで研究をしていたことももちろんある。

《1年D組》はエッチングと油画のF10とF100の三度描いている。できればF100をもう一度、こんどは偶然ではなく、プランを練って、できればアクリルで、自覚的に描いて欲しい。



注1:「表情表現」というのは顔だけではない。ロスコの抽象画にも表情がある。
2014.03.23[Sun] Post 13:11  CO:0  TB:0  上野の森美術館大賞展  Top▲

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