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マティスの『感情の遠近法』

前回、マティスの《肘掛椅子の踊り子》の遠近法について述べたけれど()、マティスの『画家のノート』(二見史郎訳)に遠近法について触れている箇所を見つけた。

遠近法について----私の最終的な線描のデッサンはつねに自分の鮮明な空間を具えていて、デッサンを構成している対象はそれぞれ別の平面に置かれている。したがって遠近法のなかにあるが、“しかし、感情の遠近法のなかに”、暗示された遠近法のなかにある。(『画家のノート』P184)


「感情の遠近法」というのは「線の遠近法」のように合理的な空間ではないということだろう。しかも、対象はそれぞれ別の平面に置かれているというのだから、透視図法に従った一つのまとまった空間ではない。線遠近法の空間は解体され、そのかわり平面に基づいた新たな「感情の遠近法」が生まれる。

上述の文が引用された章(注1)は「デッサンは芸術の誠実さである。」というアングルの言葉から始まる。国立美術学校のデッサン室の入り口に掲げられていたエピグラムだけれど、マチスはこの言葉の意味が理解できなかったという。誠実さ(probity)とは対象を正確にデッサンすることだろうが、マチスにとってそんなデッサンの考えは間違いだと思った。

-----表現すべき対象のありのままのデッサンを忍耐強くやらせることを通して彼らを制作に釘づけにすること。(服の裁断と仕立てに失敗して、体を締めつけ、その動きを不随にするような手直しをいくつもやって服をお客の体に密着させることで窮地を脱しようとはかる仕立屋を私は思い浮かべる。)

-----構図の機械的な手段を通して想像力の貧困をすくうこと。(P180~181)


マチスには「誠実さ」とは誤魔化しにしか思えなかった。

私の線画は私の感動の直接の、もっとも純粋な翻訳である。(P183)


マチスは、自分の線画は「感情の遠近法」であるといっている。これはモデルのデッサンについてばかりではない。

彼女(モデル)たちが私に引き起こす情緒的関心はとくにその体の描写に現れるわけではなく、むしろ、しばしばカンバスまたは紙の全体に広がって、その編曲、その建築構成を形づくっている線や独特のヴァルールによって表されている。しかし、誰もそれを感じとらない。おそらく、これは昇華された逸楽であって、まだみんなにとっては感じとれないのかもしれない。


感情の遠近法は人物像としてのモデルだけではなく、室内の線や色彩によってキャンバス全体の空間を支配する。しかし、モデルのデフォルメには容易に気付く観者も、キャンバス全体の感情の遠近法を理解してくれるひとは誰もいない。これは、おそらくマチスの線と色彩の葛藤、あるいは平面性と空間の問題が装飾的であると誤解された理由でもあるのだろう。

ピカソの新古典主義がキュビスムの解体された空間の再生だったように、マチスの「感情の遠近法」もまたキュビスムの理知的な遠近法に生命を吹き込むことだった。ピカソは『ボリューム』によって、マチスは『平面性』によって、二人は別の道を通って同じ場所を目指していたのだ。

マチスの《感情の遠近法》は新表現主義のような激しい情緒的な空間ではなく、絵画の平面性に基づいた繊細で感覚的な空間なのだ。これは具体的な作品によって説明しなければならない。


注1:『デッサンと色彩の永遠の葛藤』

2013.01.04[Fri] Post 22:10  CO:0  TB:0  美術評論とは何か  Top▲

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