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⑮『ポロック展』:絵を見る距離

絵は見る距離によって見え方が違ってくる。例えば、会田誠の《灰色の山》は、近づいて見れば背広を着たサラリーマンやOA機器のゴミの山である。桑久保徹の作品も近づけば離れては見えなかった細部が見えてくる。もちろん会田誠の《灰色の山》ように、まったく別の図像主題が現れるわけではない。どちらにしろ、遠くからでは見えなかった細部が、近づくと見えるということだ。

上の例では、図像主題の見え方が変化するのだが、別の変化もある。それは、近づくと知覚が優位になり、絵画の物理的表面が現れ、遠ざかれば想像が優位になるという現象だ。見る距離によって、知覚、想像、錯視が微妙に変化する。通常の具象画では、「知覚に基づいた想像」が働いている。例えば、クールベの《ルー川の洞窟》では、キャンバスの黒い色面の知覚に基づきながら、洞窟の奥深い暗闇を想像している。この場合、黒いキャンバス表面にも、洞窟の暗闇の空間にも注意を向けることが出来る。野田裕示の凹凸のある作品は観者の動きに伴ってさまざまに変化する。観者の身体は物理的絵画と同じ空間に属する。したがって絵画表面にデコボコの凹凸があるとき知覚が支配的であり、イリュージョンが生じにくい。さらに野田氏には凹凸ではなく、表面を漆塗りのように研磨して、工芸品のような物質感を出した作品もある。もちろん工芸的な表面は平面であっても、漆塗りの板(事物)のように射影を通して知覚される。

斉藤規矩夫の《Indian Beans》が、知覚と想像と錯視が渾然一体となっていることについては、すでに「『ポロック展』番外②」で述べた。『Vision's』で展示されていた《ロ・ロ・パス》や《二つ月》はさまざまな技法を使っているのだけれど、それは、距離や視点の変化にともなって、知覚と想像が絡まって繊細な空間のイリュージョンを生んでいる。

斉藤規矩夫の作品とは違って、ポロックには、知覚と想像がはっきりと分離した作品がある。1943年制作の《ポーリングのある構成Ⅱ》は、出来上がった抽象画の上から疎らに広い範囲にポーリングした作品だが、ちょっと頭を動かしただけで、ポーリングの線が浮き上がり、下の抽象画の表面が沈み込んで、間に厚い透明の層が現れる。いろいろ試して見たところ、一番強い錯視が生じる距離があって、これは推測なのだが、エナメルの盛り上がった線が知覚され、下の抽象画が想像されて、その間に空間のイリュージョンが生まれ、さらに頭を動かしたことによって運動視差の錯視が生じ、なお一層の深い空間のイリュージョンが見えたのではないか。これは推測なのだが、あまり近づいても遠ざかっても、それほど強い錯視が現れないのは、たぶん、黒い線の知覚と背後の抽象画の想像が上手く分離しないからではないか。(今、カタログの写真を見ても、実作ほど強い錯視は生じない。写真に撮ると、絵具などの盛り上がりが見えなくなるので、知覚と想像の分離が現れにくくなったのかもしれない。)

知覚と想像と錯視が相互に区別できないわけではないが、実際の絵画を観賞では、三つは入り交じっているので、明確に区別するのは難しい。斉藤規矩夫の作品はそういう区別が難しい作品の例だが、逆に知覚と想像が明確に分離した作品として、ゲルハルト・リヒターの《Overpainted Photographs》を挙げることができる。説明の必要はないだろう。






さて、ポロックの《インディアンレッドの地と壁画》では、知覚と想像と錯視はどうなっているだろうか。愛知県美術館ではあまりに錯視が強く、知覚と想像と錯視の協働を見ることが出来なかった。東京近代美術館で《インディアンレッドの地と壁画》を見るのが楽しみである。
2012.03.08[Thu] Post 00:33  CO:0  TB:0  ポロック展  Top▲

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