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もとは美術展評のブログ 絵画と映画と小説と、そして哲学を少々

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岡田武さんへの返事(2)

最初に「現象学的還元」について述べておきたい。

岡田さんは、「そして『現象学的還元がされていない』事柄は総て間違いになってしまいます。」と書いている。これはちょっと詭弁のような気がする。たしかに、相手の知らないことを持ちだして議論をすすめるのは卑怯だとは思う。しかし、わたしは現象学の議論をしたわけではない。なるべく個々の具体的事例に関して説明をする努力をしている。ある波長の光が赤に見えるというのは、科学的態度ではまったく正しい。同じように、ポンゾ錯視と言われる現象も存在する。しかし、この錯視は「見えるとおりに見る」態度には現れてこない。この錯視が発見されたのは、「見えるとおりに見た」長短と「測定する態度」で比べた長短と比較してみてはじめて判った現象だ。(比較の手段はいろいろあるだろう、ポンゾ氏がどうやってこの錯視を発見したかの仔細は知らない)

現象学的還元をしていないから間違いだといったわけではない。いろいろな誤解があるけれど、それはたぶん現象学的還元をしていないからだと、私の考えを付け加えただけだ。それを、あたかも哲学の知識を持ちだして議論を有利に進めるために、通俗的な弁論術(相手の知らないことを持ちだしてけむにまく)を使ったような印象を与えるのはいかがなものか。

ともかく、「現象学的還元」と言う言葉は使わないようにする。そんなものはなくてもわたしは議論を進めるのに一向に不便はしない。まず、絵を見て議論をするようにしたい。もちろん岡田さんも、本で読んだ美術史や心理学の知識はあくまで絵を見るための補助的なものにして欲しい。そうでなければこの論争も不毛なものに終わるだろう。

幸い、岡田さんは『「見える通りに見る」ということ』(http://manji.blog.eonet.jp/art/cat8382308/)を書いている。読んで欲しいと言っているのだから、私の「見えるとおりに見る」に対する反論だと思うのだが、残念ながら、何を言いたいのか分からない。イリュージョンの問題だと思うが、すでに言ったように、オプティカル・イリュージョンとピクトリアル・イリュージョンは異なる意識なのだ。といっても、これは複雑な問題なので、あわてず、少しずつ述べていく。(すでにくり返し述べている。赤とピンクは区別できる。しかし、どこに境界があるかは曖昧であるし、個人差もある)

最初に「ポンゾ錯視」の例をあげている。『「見える通りに見る」ということ』の図を見てください。奥行きを感じるだろうと岡田さんは言う。まあ、感じなくはない。それはいいけれど、岡田さんはおかしなことに、「カテゴリーは抽象画でも具象画でもいい」と言うのだ。何度も繰り返しているように、わたしは二つの問の答えを見つけるために美術評論を書いている。一つは、マチスとピカソは、抽象画に影響を与えながら、なぜ、本人二人は、具象画に止まったかということ、そして、もうひとつは、写真は、なぜ、すぐに見飽きるのかという二つの問だ。

具象画と抽象画の問題は重要な問題だ。岡田さんは、抽象でも具象画でもかまわないと言いながら、じつは、三角図形にもまっすぐ伸びる道路にも、どっちともとれる絵を描いている。なぜそんなことをするか理由はわからないけれど、たぶん、遠近法との関係だろう。ポンゾ錯視は平面図形の三角形を使っても現出するが、それでは遠近法的奥行きが生まれない。そこで、一本道に見えるように、地平線を加え、頂点の部分を一部欠落させている。さらに、両側の線の下部に線を書き加えている。これは、振動を示す漫画的手法で、自動車で走っているイメージなのだろうか。

そんなに遠近法的奥行きを示したかったら、なぜ、なぜ並木道にしなかったのか。あるいは自動車を描かなかったのか。このあたりから岡田さんのいうことが良く分からなくなる。岡田さんは「ハの字の絵」にポンゾ錯視のために二本の赤い線を描くのだが、どういうわけか通常のポンゾ錯視の図と違って、左右にずらして描くのだ。いずれにしろ、岡田さんは線路のようなハッキリとした線遠近法の絵ではなく、平面的な三角図形にも見える図を用いている。

そして、ポンゾ錯視は遠方過大視という恒常視(注1)がはたらくから、ハの字が奥行き空間に見えるという。遠方過大視というのは、三次元の知覚空間で起こることで、図像で遠方過大視が生じるためには、すでに、奥行きのイリュージョンがなければならない。しかし、すでに述べたように、奥行きのない三角図形でもポンゾ錯視は生じる。また、平面的な三角図形でも、奥行き空間のイリュージョンらしきものが現出する。ようするに、奥行きのイリュージョンが現れたり、消えたりする。もちろん、これもいろいろな条件に依存する。たとえば、三角形の頂点の内角が小さいほど遠近感がつよくなる。

岡田さんが、なぜ、具象にも抽象にも見える図を使ったかは、これで分かる。遠近法の奥行き空間のイリュージョンとポンゾ錯視は密接な関係があり、ポンゾ錯視(ミュラー錯視)は、文化的背景によって(実は被験者によっても)、強度に差がある。なかには錯視が見えない人もいると思われる。ということは、赤い線が同じ長さに見える文化的背景を持つ人がいるということになると言う。「このことはこの絵、「ハ」の字を見ても奥行き知覚が起こらない人がいるということを意味する」と強引に結論する。(注2)

だから遠近法のイリュージョンが見えにくい単純な図形ではなく、安定した遠近法のイリュージョンが見える一本道や線路などの具象画にしなかったのだ。それでは、具体的な線遠近法で描いた風景なら、ポンゾ錯視はどう見えるかを確認しておく。ここには、じつは、図像の重要な問題が隠されているのだ。


これはよく使われる「ポンゾ錯視」の作例である。下の二本の線を注視すれば、ポンゾ錯視が見えるが、図は平面的である。

しかし、頂点に注視すると、そこが消失点になって、奥行きのイリュージョンが見られる。二本の線はボンヤリとするが、ポンゾ錯視は見える。とくに上の線は濃く見える。









この図はWikipediaからコピペした。明らかに上の黄色の線が下の黄色の線よりも長く、彩度が高く見える。

次に赤い二本の並行線が黄色い線を挟む。黄色い線はほとんど同じ長さに見える。あるいは、赤い線は平行線ではなく、下が狭くなっているようにもみえる。それにともなって、下の線が上の線より短く見える。

黄色い線に注視するとき、二本の黄色い線は、線路の遠近法空間から分離され、画像表面に浮き上がって見える。

ここで、図像客体と図像主題を区別しておく。二本目の枕木と五本目の枕木はどちらが長いか。もちろん線路の枕木だから、同じ長さだ。それなら、二番目の線分(枕木)と五番目の線分(枕木)はどちらが長いか。遠近法のイリュージョン空間ではなく、平面的な図形として見れば、二番目の線分(枕木)がもちろん長い。前者は図像主題(意味)の長さで、後者は図像客観の長さである。

図形と図像の違いは、枕木ではなく、線路についても言える。図形としては二本の線はだんだんに接近して、先に伸ばせば、交差しているが、線路(図像主題)としては平行線なのだ。

具象的な遠近法のイリュージョン空間から見れば、上の黄色い線は下の黄色い線の二倍以上の長さに見えてもいいのだが、黄色い線は線路の奥行きイリュージョンの空間ではなく、この画像の表面に浮いているから、そうは見えない。それでも弱い錯視がみられるのは、背後の線路の図形に影響を受けているからと思われる。

ポンゾ錯視が平面図形でも生じるけれど、遠近法のイリュージョン空間では、より強く錯視があらわれることは、下の遠近法の絵画の例で見ればはっきりと分かる。遠くの自動車は近くの自動車の二倍の大きく見える。道路や周りの遠近法的風景を隠してやれば、ほぼ同じ大きさに見えることは言うまでもない。




絵画的イリュージョンと視覚的イリュージョンは異なる。われわれに重要なのはもちろん絵画的イリュージョンである。イリュージョンが「そうでないのにそう見える」ということなら、ポンゾ錯視はオプティカル・イリュージョンでさえないのだ。なにしろ、ポンゾ錯視は「見える通りに見ている」からだ。

さて、以上はピクトリアル・イリュージョンについて述べた。次回は『見える通りに見る』の後半部を読むことをとおして、日本画の遠近法について述べる。



注1:遠方過大視の恒常性については、図像客体と図像主題の大きさ、及び知覚空間での事物の大きさを含めて検討しなければならないが、ここでは、具体的事例に応じて論じておけば十分だろう。

注2:ミュラー錯視を遠近法で説明する理論がある。ちょっと強引すぎる。ここでは、具体的例による理解以上のことはひつではないだろう。





岡田さんへ:間違いや誤解が沢山あるでしょうが、質問反論はしばらく待ってください。





















2011.09.15[Thu] Post 22:05  CO:0  TB:0  美術評論とは何か  Top▲

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