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会田誠の記号論③

会田が数字をもとに抽象画を描いたのは、思いつきだと前回、書いたけれど、もちろんそんなことはない。会田は文字を主題にした作品が《1+1=2》以前にも、《美少女》と《桑田》と《書道教室》と三つの作品がある。これについては、『会田誠の美少女』ですでに書いた。該当の箇所をコピペしておくので、もう一度読んで欲しい。


    文字と絵画

 「アートで候。」展で、会田のこれまでのビデオ作品を編集したものが上映されていた。コタツに入ったビン・ラディ ン、縄文式怪獣の雲古、女装した会田を犯す会田など、あまり上等とはいえないギャグの中で、唯一笑えたのが、〈美少女〉という文字を見ながら会田が全裸で 自慰行為をしているビデオだ。

 マシュー・バーニーとアート・リンゼイは、自分たちの「オナニー・ショー」を自然再生のメタファーだなんて主張 していたらしいが、会田のパフォーマンスは、名辞を実物の代わりにするという定番のギャグだ。レストランでビフテキを注文したら、ビフテキと書いた紙が皿 にのせて出て、客がそれをナイフとフォークで美味しそうに食べたという話だ。

 文字(言葉)を見て興奮するということは分からないではない。中学生の頃に辞書をめくりながら興奮した憶えがあるだろう。アダルト・ビデオはそういう文字を使ってタイトルを付けている。しかし、文字を大きくするとよけいに興奮するのだろうか。

 絵ならそういうこともあるだろう。ピンナップは、見開きでは満足せずに、三つ折りの綴じ込みにしたり、等身大のポスターにしたりする。大きいほうが興奮する(らしい)。

 しかし、文字は大きく書こうが小さく書こうが同じ意味だ。明朝体で書こうがゴシック体で書こうが美少女は美少女だ。絵だってほんとうは文字と同じだ。 《大山椒魚》の大きい美少女でも《滝の絵》の小さい美少女でも、美少女は美少女だ。現象学的に言えば、図像客観が大きくても小さくても、図像主題は指示対 象の現実の大きさに見えるということだ(HP『絵画の現象学』参照)。

 ところが、実際は、大きい美少女の絵が好まれるは、絵は言葉と異なり、類似によって対象をあらわすアナログ記号だからだ。線や色の違い、あるいは全体と 部分の関係などが対象の現れ方に影響する。大きさの違いは、我々の絵を見る視線の動きを変えるし、そもそも、等身大の美少女の絵は身体感覚(触覚)を刺激 して美少女のイリュージョンを強める。

 アナログ記号の絵では、美少女とそうではない少女との違いは連続的だが、デジタル記号の言葉では離散的 だ。言葉は差異のシステムに基づいて約定的に概念を示す。もちろん文字も差異に基づいている。〈大〉と〈犬〉と〈太〉は、点の有無と位置が弁別的である。 二項対立ではないが、差異のシステムを作っている。しかし、差異のシステムは大と犬と太が別の言葉をあらわす記号として使用できるというだけで、差異自体 が意味を生み出すわけではない。言葉と概念の結びつきは恣意的なのだ。(といっても、差異のシステムと概念があらかじめ別々にあって、それがあとから組み 合わされるわけではない。また文字言語と音声言語の関係についてはここでは述べない。文字は必ずしも音声を通して意味に到達するわけではない)。

 文字はシステムあるいは構造だから、〈犬〉の点の位置を変えると意味が変わる。しかし大きさを変えても、意味はかわらない。大きさは弁別的ではない。もちろん、色も字体も運筆も大きさと同じように弁別的ではない。

 しかし、文字はすべてが言葉(の意味)に回収されてしまうわけではない。文字は依然として図形であり、象徴機能を持っている。

 会田は、そのことを文字を大きくすることで見せてくれた。以前に描かれた《桑田》と今回の『アートで候。』展の最後を飾っていた《書道教室》だ。二つの作品は文字を大きくするという点では、同じ方法なのだが、その表現するところはまったく違っている。

 桑田は多義的な言葉である。十ポイントの活字ならば、「クワタ」と読むのか、「ソウデン」と読むのか判らない。通常、文字は文章の中で言葉(読み)と結 びつく。「桑田、メッタ打ち」とあれば、クワタと読み、「桑田変じて滄海となる」とあれば、ソウデンと読む。ところが、会田の《桑田》は、文脈ではなく、 大きさと色で読み(意味)と結びつく。赤い縁取りした活字体で大きく「桑田」とあれば、スポーツ紙の一面の見出し文字だ。だからこの文字は、クワタと読ん で桑田真澄のことなのだ。そして、もちろん赤い色は敗戦投手の色だろう。

 《桑田》では、大きさや色という絵画的なものが、文字の言語的なものを方向付け(投錨:バルト)る。しかし、《書道教室》では、文字の図形的絵画的なものが、文字の言語的なものを抑圧し、文字と言葉の結びつきを壊している。

 《書道教室》は巨大である。《桑田》は、まだ、全体が見える。しかし、《書道教室》は大きすぎて読めない。一階に降りる階段の横の壁いっぱいに掛けてあ る。ひょいっと見ると、この看板が目に飛び込む。あんまり近くて何がなんだか判らない。目が図像意識から文字意識に切り替わらない。少し、離れて全体を見 渡したが、絵だか文字だか判らない。

 正方形の白い板に、正方形の文字が、たてよこ、同じ間隔で二つずつならんでいるので、四つの文字がバラバラ になって、読む順番がわからない。「教書室道」とも読めるし、「書室教道」とも読める。あるいは「教道室書」とも「書道教室」とも読める。意味が一瞬、解 らない。目がまわる。アクリル板をカットした文字は、本物の看板のようみえる。レディ・メイドかもしれない。 「道」の字の「しんにゅう」を見ていると、 なんだか不愉快になってくる。これは習字のお手本なのだ。〈書〉〈道〉〈教〉〈室〉の文字は、習字の教則本の「正しい」運筆を示して、曰く「汝、斯くの如 く書くべし」と。文字は法であり、掟である(バルト『エルテ または 文字通りに』)。しかし、その法を述べる文字が看板屋のレタリングなのである。たし かに大きい文字は暴力である。しかし、大きな声で、むなしく叫ぶだけである。

 文字は弁別的な特徴によって言葉あり、図形的な特徴によって象徴 となる。《美少女》は赤い大きな漢字である。漢字はもともと絵だったのだから、記号の背後に図像がある。たぶん、会田は美少女の文字にフェティッシュな欲 望を感じているのかもしれない。あるいはまた美少女の文字を高く掲げて、見上げているのだから、美少女教の信者かもしれない。しかし、フェティシズムを持 ち出せば、何だって説明できるのだから、面白くない。《美少女》のビデオは、絵ではなく等身大の文字を見ながら全裸で自慰行為をする間抜けな会田誠です と、すなおに受け取るのが、つまらないギャグにたいする礼儀だろう。



言葉は、音声言語でも文字言語でも、その物理的条件に依存しない。ソシュールが言葉は質料ではなく形相だと言ったのはそういう意味だ。それなのに大きくて赤い色に塗られた《美少女》の文字に向かって自涜行為をしているのがギャグになっている。

《桑田》は《美少女》と同じレタリング文字である。レタリングは語の本来的な意味に影響を与えないが、語の使用文脈をあたえることがある。バルトが映像に付けられてキャプションが投錨の役割をすると言ったが、このレタリングも投錨の役割をしている。《桑田》はスポーツ紙の見出し文字のレタリングなのだ。

《書道教室》は筆で文字を書く事を教える塾の看板文字がコンピューターのフォントで書かれているというアイロニーである。

そして、《1+1=2》は弁別的差異のシステムをデコンストラクションして、文字を単なる図形にし、それを立体化したり、デフォルメして抽象画風飾り文字を作っている。

クレーも文字記号を利用した抽象画を描いているが、象形文字や象徴、文字の部品のような線分を用いて成功している。しかし、会田の《1+1=2》は、文字をデフォルメして抽象画の中に隠した絵画的イリュージョンを欠いた失敗作である。会田の文字を使った作品で一番面白いのは依然として《書道教室》ではないか。

2010.08.07[Sat] Post 15:10  CO:0  TB:0  -会田誠  Top▲

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