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『桑久保徹』①ARTIST FILE 2010(国立新美術館)

奇妙な絵だ。最初の壁に《壺》の絵が上下二段に並んでいる。アマチュアが描いたようにも見える。壺の上に人が乗っている。人が小さな妖精のようにも見える。あるいは反対に、壺が巨大に見える。どちらかわからない。いろいろな壺を描いていろいろなタイトルを付けているているけれど、おもしろような気もするし、つまらないような気もする。良く分からない。

次の広い壁に並んだ絵もかわった絵だ。ちょっとみただけでは、何が描かれているかわからない。少し離れてみると湖の風景のようだ。手前の岸がキャンバスの下半分を占めている。その上に波打ち際があり、その上に向こう岸の街や山が見え、さらにその上には空がある。正確に言うと「そういうふうに見える」というだけなのだが。

細部を見ると細かい事物が無数に描かれているのが判る。絵具を細かく盛り上げて描いているので、筆触というより、刺繍あるいははり絵やモザイク絵のようでもある。あるいは、そうではないようにも見える。絵具の小片を張り合わせたモザイク模様に見えるけれど、風景にまとまらない。どうやら描かれている事物が浜辺の上に置かれているのか、浮かんでいるのか、あるいはキャンバスの上にあるのか、あるいは絵具の塊なのか、それともちゃんと近景中景遠景のなかに収まっているのかなかなかわからない。

事物がばらばらで、絵具がばらばらで、線がばらばらで、色がばらばらで、かろうじて遠近法が空間をまとめているところに、桑久保のオリジナリティがある。カタログの小さな写真をみると、物理的な平面とイリュージョンの空間が面白く戯れているようにみえるけれど、美術館の実物を見れば、華やかな色彩にもかかわらず、すぐに見飽きてしまう、図画工作なのだ。

わたしにはこの絵画をつまらないと断言することはできない。ひょっとしたら、まったく新しい絵画なのかもしれない。ただ私には絵画表面をいじくりまわした絵にしか見えないことも本当だ。そういう意味ではVOCAに推薦すれば受賞まちがいなしの作品である。次の作品に期待しよう。



[追記] - 学芸員の平井章一が、カタログの解説で桑久保の描法やマチエールがゴッホを想起させるとか、白や赤、黄のなどの取り合わせがベルギーの画家アンソールを彷彿とさせると書いているけれど、わたしにはまったそんな連想は生じなかった。たとえ外面的な技法色使いが似ているとしても、ゴッホやアンソールとは似ても似つかない絵画であるところに、桑久保の絵画の不思議さがある。

『桑久保徹』②



2010.05.28[Fri] Post 12:34  CO:0  TB:0  -桑久保徹  Top▲

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