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『海辺のカフカ』の罪と罰(3)

庄造は猫のリリーを、小泉被告は愛犬チロを愛していた。しかし、ナカタさんはゴマちゃんを特別愛していたわけではない。ただ、猫語が話せるナカタさんがアルバイトで猫探しをしていただけだ。

動物が言葉を話す寓話は良くあるけれど、それは動物の擬人化で、話すのは人間の言葉だ。ところが、ナカタさんが話すのは猫の言葉で、他の人間たちには理解できない。ということはナカタさんは人間とは別の世界に生きていることになる。ジョニー・ウォーカーを殺したあとは、ナカタさんは猫語を忘れてしまうのだから、16章はファンタジーの世界の出来事だ。

『海辺のカフカ』は、ジョニーを殺しナカタさんの無罪証明の物語になっている。ナカタさんはリザヴェーダを殺さなかったラスコーリニコフだ。

学生の頃『罪と罰』を読んで、どうも腑に落ちない点があった。ラスコーリニコフがリザヴェーダを巻き添えに殺してしまったことを悔やんで、いくらあくどいからといって金貸しのアリョーナを殺したことをあまり気に掛けていないことだった。それなら、リザヴェーダを殺さなかったら、この強盗殺人は許されるというのだろうか。記憶違いかもしれないが、少なくとも殺人の直後のラスコーリニコフの心境は、そうだったような気がする。そのあとは選ばれし者は、より高邁な社会正義を実現するためなら矮小な人間を殺してもよいという哲学は崩れ、女性によってキリスト教的な愛に目覚めるという、ちょっと甘いところがあるけれど、革命ではなく、宗教的な愛による救済のドラマが描かれている。

それに対して、ナカタさんの問題は、「猫を助けるために人を殺しても良いか」という正当防衛の問題だ。小泉毅被告なら当然正当防衛だと主張するだろうが、法律的には猫に正当防衛が適用されるのかどうかわからない。もし正当防衛だとしても、猫を助けるためにジョニー・ウォーカーを殺す必要はなかったとすれば過剰防衛になる。不思議なのはナカタがジョニー・ウォーカー殺しを少しも後悔していないことだ。

村上春樹はファンタジーと現実を境界をなくすことで、ナカタさんの罪と罰をうやむやにしている。

子供の頃の不思議な事件で記憶を失い読み書きも出来なくなったナカタさんには、いわば責任能力がない。動物のために人を殺したといっても、猫の言葉が話せるのだから、ナカタさんには同情できる。それにジョニー・ウォーカーは三味線を作るためではなく、音のでない笛を作ると言って、快楽のために猫を殺している悪魔だ。まだ動いている猫の心臓を口に含んで、ナカタさんの憎悪と恐怖をかき立てる。そして、自分はこの不条理な生を終わりにしたいのだが、自殺は許されていないから、代わりに殺してくれと嘱託殺人を懇願する。

助けた猫を飼い主に渡したあと、ナカタさんは交番に自首して出るけれど、相手にされない。ラスコーリニコフは老姉妹を殺したあとは罪を悔いて苦しむのだが、ナカタさんは人殺しをちっとも悔いていない。ただ、、田村カフカの家出の道程をたどるように、何ものかに導かれ、途中猫語のはなせる星野さんの案内で、目的地だったらしい四国の図書館に到着し、そこで田村カフカの母親らしい佐伯さんからノートを受け取りそれを焼却する。それがナカタさんの旅の目的だったのだが、その仕事を果たしたあと、ナカタさんは別の世界へ入り口である石の蓋のそばで死んでしまうのだ。

荒唐無稽と言うほかない。ここにはいかなるメタファーも謎もない。「16章」で提起されたナカタさんの「罪と罰」はファンタジーの世界の中で雲散霧消してしまうのだ。ナカタさんの物語に平行して村田カフカのエディプスの物語があるのだが、ジョニー・ウォーカーとカフカの父親が同一人物らしきことが暗示されているだけで、二つの物語がどんなつながりがあるのか一向にわからない。

つづく

2009.11.30[Mon] Post 20:46  CO:0  TB:0  村上春樹  Top▲

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