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『1Q84』の高級レストラン

七月十七日の『産経抄』(MNS産経ニュース)に『1Q84』を枕にしたコラムが載っていた。

▼「まずい」と文句をつけて、突っ返すことができるものといえば、テイスティングの機会があるワインが挙げられる。発行部数200万部を突破した超のつく話題の長編小説『1Q84』のなかに、こんな場面がある。
▼主人公の一人、青豆が、友人とフランス料理店のテーブルにつくと、知り合いのシェフが、サービスだと、高級ワインをもってきた。前日に訪れたさる高名な政治家が、味にクレームをつけたワインだが、実はなんの問題もないと、シェフはいう。
▼「ほんとうはワインのことなんてろくにわかっちゃいないんだ。ただ人の手前、かっこうをつけるためにいちおうクレームをつけるんだよ」。全体は奇想天外な物語なのに、細部は驚くほどリアルに描かれている作品だから、このエピソードも、作者の村上春樹さんの見聞に基づいているに違いない。


このあと、『産経抄』のコラムニストは、麻生首相にクレームをつけた自民党議員を、このワインの味にクレームをつけた客になぞらえているのだが、それはともかく、私はこの場面を、ワイン通ぶった客の俗物性(レトロな言葉だ)を批判した場面だとは思わなかった。

そうではなく、どちらかといえば、

青豆は相手にショーン・コネリーのような禿げた中年男(あきらかに父のイメージだ)を好み、女性警察官が男から受けとった金で、知り合いがシェフをしてい る有名レストランで格安で食事をする。しかも、シェフはワインのわからない客が知ったかぶりで交換させたという高級ワインを、その客をわらいものにしなが らサービスするところは林真理子のエッセイの世界である。(『ノルウェーの森』再読1


とブログに書いたように、フェミニズム批判として読んだ。フェミニストの敵であるらしい林真理子のセレブ自慢のひとつに、有名レストランでメニューにない料理を出してもらうというのがある。これはまだいい。自分が特別扱いされて喜びたければ喜んでいればいい。しかし、シェフだろうがボーイだろうが、レストランのスタッフが他の客の悪口をいうのを聞いて喜ぶというのはいかなる魂胆か。他の客の悪口を自分に言うということは、自分の悪口も他の客にいっていることではないか。(これは郭などで、他の客を野暮だと悪口をいう手練手管に似ていないか)

『産経抄』は、「このエピソードも、作者の村上春樹さんの見聞に基づいているに違いない」と褒めている。たしかに村上春樹がやっていたジャズ喫茶はマスターと客が私的な会話をするのがウリの店だったようだが、それならなおさら他の客の悪口を言うのは、営業上まずいというだけではなく、客商売の道義に悖ることぐらい知っているだろう。

ともかく、この場面を読んだとき、非常にいやな感じがしたけれど、読み進むうちに、これはフェミニズム批判なのだと思った。なにより、相棒のあゆみが男から受け取った「売春代」で、シェフを知っている高級レストランに行って、味のわからない政治家が換えさせた高級ワインを格安で、その政治家の悪口をシェフが言うのを聞きながら飲むなんて、青豆の批判としか考えられないからだ。

フェミニストには売春を支持する一派もいるらしい。かれらに言わせると結婚こそ男性による女性の性搾取であり、それにくらべると売春は性的サービスに対する代価をそのつど受け取るのだから、男女は平等になるという(本当にこんなこと言ってるかどうかしりません。いま、私が勝手に考えた理屈です)。それなら、あゆみが代金をもらったのもフェミニズムの教理に反しないことになる。

しかし、そうだろうか。青豆たちは自分の性欲処理のために男を利用したのだから、むしろ代金を払うのは青豆のほうではないか。そうじゃない、むこうだって満足を得ているのだから、すで代価は与えている。セックスなんて相互オナニーのようなものだ云々、フェミニズムの議論なんて大抵は神学論争のような屁理屈である。議論してもはじまらない。

わたしには『1Q84』のテーマはカルト的なフェミニズムの暴力性をメロドラマの純愛で浄化することだとおもっていた。しかし『産経抄』のコラムを読むとそうとばかりいえないようだ。村上春樹はどうやら色男の手練手管に思った以上に長けているようだ。そうおもうとエルサレム賞のスピーチもそうとう怪しくなってくる。

村上には日本の近代文学の「誠実の主題」が隠されている。


2009.07.17[Fri] Post 23:09  CO:0  TB:0  村上春樹  Top▲

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