ART TOUCH 絵画と映画と小説と

もとは美術展評のブログ 絵画と映画と小説と、そして哲学を少々

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.--[--] Post --:--  CO:-  TB:-  スポンサー広告  Top▲

COMMENT

NAME

SUBJECT

BLOG/HP

PASSWORD

COMMENT

SECRET: ※非公開コメントにしたい場合はBOXにチェックをして下さい ⇒ 

SUBMIT: 送信 

TRACKBACK

スポンサーサイト のトラックバックアドレス
http://petapetahirahira.blog50.fc2.com/tb.php/584-3638b826
 ⇒ この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

『1Q84』の性と暴力(1)

村上春樹がエルサレム賞の授賞式に出席したことを非難されたとき、私は大江健三郎ならガザの子供たちの側に立って授賞を拒否しただろうと書いた。もちろん村上春樹を支持してのことだ。(記事『村上春樹のジレンマ』

村上春樹の最新作『1Q84』のテーマが「性と暴力」だと聞いて、同じように大江健三郎を思い出した。わたしと同世代ならたぶんみんなそうだろう。

もちろんこのことで村上春樹と比較されるのは、中上健次なのだが、あいにくほとんど読んでいない。『枯木灘』など、いくつかの作品を読もうとしたことはあるが、人間の性(サガ)とか業とか血とか心象風景とか、文体の工夫があるのだろうが、性と暴力が人間の魂(深層心理)の表現あるは象徴であるがごとき、そのあまりに古めかしい文学的図式に閉口して、どれも途中で投げ出した。(村上春樹の批判者が中上健次の支持者とほぼ重なるのは偶然ではない)

大江健三郎の性と暴力と言えば、『セブンティーン』や『性的人間』だ。両方とも半世紀ちかく前に読んだので記憶は定かではないが、『性的人間』は痴漢の話だったように憶えている。電車の中で女の尻を触ることが実存の証であるというサルトル(?)風の行為哲学の実践という荒唐無稽な話である。痴漢のところまで読んで、あきれてあとは読んでいないので、結末はしらない。

『セブンティーン』は自涜行為とテロを結びつけたもので、ナイフがペニスの象徴になっているのはいうまでもない。たしかにこれは大江の初期の傑作の一つだとおもうが、天皇を超自我とする右翼のテロの図式性は、連合赤軍の神なきリンチの図式性と重なって見える。どちらもマッチョな男根中心主義なのだ。

村上春樹は性を脱記号化する。性行為が自分以外のものを意味しない。性からすべての象徴性と内面性を剥ぎ取る。村上の性描写が薄気味が悪いのは、それが性行為以外の何ものもあらわさないからだ。

また、村上は性からできるかぎり暴力的なものを取り去る。小谷野敦は

「巷間あたかも春樹作品の主題であるかのように言われている「喪失」だの「孤独」だの、そんなことはどうでもいいのだ。(…)美人ばかり、あるいは主人公 の好みの女ばかり出てきて、しかもそれが簡単に主人公と「寝て」くれて、かつ二十代の間に「何人かの女の子と寝た」なぞと言うやつに、どうして感情移入で きるか」(Wikipediaから孫引き)

と言う。もちろん、もてない小谷野氏がもてる男をやっかんでいるのだが、感情移入ができないのは、それだけではない。村上の主人公が、持てることを、自慢話にならないように、自慢しているのが腹立たしいのだ。俺にはちゃんと判っているぞ、というわけだ。

もちろん小谷野氏は正しい。しかし、村上の「性」には自慢話以上のものがある。男がもてるということは、性のおいて女と男が対等になれるということだ。男と女が受動性と能動性をいわば相互に贈与しあうことによって。

このことは一種の通俗性としてあらわれる。『1Q84』でも、主人公の天吾は「人妻との週一回の定期的なセックス」をする。人妻なんてAVビデオみたいで、自慢にもならないけれど、ふたりは、缶ビールを二本のむように、会えば二度セックスをする。この二度のセックスというのは、情熱的でもなく、さりとて事務的でもない、二人の充足した性的関係をあらわしている。あるとき人妻の夫から「もう妻はあなたにあいません」という電話がある。二人の関係は都合良く終わり、次の女性が現れる。

このセックスをばかばかしいと思うか、それとも缶ビール二本飲んだときのような心地よい気分になれるかで、村上的世界の好き嫌いがわかれるのではないか。

村上春樹は、『1Q84』のたくさんのセックス場面はひとをうんざりさせるかもしれないけれど、必要なものだったと、ガーディアンのインタービューに答えている。さて、他のセックス場面を見ていこう。

つづく
2009.07.04[Sat] Post 01:10  CO:0  TB:0  村上春樹  Top▲

COMMENT

NAME

SUBJECT

BLOG/HP

PASSWORD

COMMENT

SECRET: ※非公開コメントにしたい場合はBOXにチェックをして下さい ⇒ 

SUBMIT: 送信 

TRACKBACK

『1Q84』の性と暴力(1) のトラックバックアドレス
http://petapetahirahira.blog50.fc2.com/tb.php/584-3638b826
 ⇒ この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

Log in*/RSS*】  Design 「AZ+」Plugin Template...  Page Top▲
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。