ART TOUCH 絵画と映画と小説と

もとは美術展評のブログ 絵画と映画と小説と、そして哲学を少々

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.--[--] Post --:--  CO:-  TB:-  スポンサー広告  Top▲

COMMENT

NAME

SUBJECT

BLOG/HP

PASSWORD

COMMENT

SECRET: ※非公開コメントにしたい場合はBOXにチェックをして下さい ⇒ 

SUBMIT: 送信 

TRACKBACK

スポンサーサイト のトラックバックアドレス
http://petapetahirahira.blog50.fc2.com/tb.php/530-13d08b28
 ⇒ この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

津上みゆき(2)

津上みゆき(1)からつづく

津上みゆきは自分の作品は風景画だという。あらためてカタログの写真を眺めてみれば、たしかに、風景画に見えなくはない。空や雲や木や山や海があるようにも見える。

ニョウボが津上みゆきの作品を見て、山本直文やモーリス・ルイスを思い出したのは、彼らが同じように下塗りのしていない綿布に薄く溶いた絵の具を染みこませて描く「soak stain」の技法を使っているからだ。同じように、soak stainの技法を使った画家にヘレン・フランケンサーラがいる。風景のスケッチをもとに描く津上の作品は、自然からインスピレーションをえて描いたヘレン・フランケンサーラのカラー・フィールド・ペインティングに似ているのは頷ける。

カラー・フィールド・ペインティングの説明を英語のWikipediaから引用する。

In 1960 the term Color Field painting was used to describe the work of Frankenthaler. This style was characterized by large areas of a more or less flat single color. The Color Field artists set themselves apart from the Abstract Expressionists because they eliminated the emotional, mythic or the religious content and the highly personal and gestural and painterly application.

カラー・フィールド・ペインティングは、抽象表現主義にあった情緒的神話的宗教的な内容を排除し、絵具の塗り方も、あまり個性的ではなく、タッチもストロークもめだたないように、そして絵画的(painterly)描写にならないようにした。そのためには、soak stainの技法が効果的だったと思われる。

それで、津上みゆきの作品を見ると、染み込みの技法ばかりではなく、色を塗り重ね擦ったようなストロークのあとがあり、どちらかと言えば、ペインタリーな開放性のある絵画表面になっている。その意味では、津上はカラー・フィールド・ペインティングとは言えないだろう。

さらに、津上は、風景との類似を残すことで、カラフルな画面に象徴性を与え、情緒的精神的な内容を生みだそうとしているのかもしれない。もちろんそんなことが成功するわけはなく、ただ、津上の制作上の哲学めいた饒舌によって台無しになっている。

津上はスケッチを見せ、実作との「関係性」を示す。そして言う。

「描くだけではなく、記憶をドローイングに起こしたり、文字に書き留めたり、脳裏に焼き付けたりもします。そうすることによって、イメージは反復し増幅します」
「そうした様々な景色の断片の在り様は取捨選択され、改めて手繰り寄せられた時、あらたにひとつの風景が立ち上がり、絵画として誕生」する。(加藤洵のカタログ解説から)


そして、出来上がった作品には、《View - "Cycle"26Feb.-10Apr.,05〈Way〉》2005年や、《View - at 2:30a.m.,15 Mar.,08》2008年など、時間の経過や瞬間を示すタイトルがつけられている。だからといって、われわれは滲みや擦りつけられたよなストロークに時間を読み取る義務はない。

津上はタイトルの解説をする。

“View”とは、「それは、さまざまな観点と切り口で世界を解き明かそうとする生き方である」(同上)

画家がいくら深遠なことを言っても、作品のほうがスカスカ(2ちゃんねる)だったらなにもならない。(もちろんスカスカだと断定しているわけではない。作品と作家の言うことは区別しなければならないと言いたいだけだ。)

たぶん、津上はsoak stainの技法のスカスカな絵画表面の欠点を克服するために、綿布をパネル貼りにして、油彩やアクリルを薄く溶いたものばかりではなく、顔料、膠、水彩、油彩、鉛筆、パステルなど、染み込み以外の方法も使って、絵画の物理的表面を多層多様にしようとしている。また、風景を一種の「ホームレス・リプレゼンテーション」として利用することで、画面に空間のイリュージョンを与えようともしている。しかし、それでも「soak stain」のスカスカ感を克服することができず、そのかわり芸術論でごまかそうとしているのではないか。優れた作品というものは、観者ばかりではなく、作者もまた沈黙させるものだ。

おそらくフランケンサーラを支持するグリーンバーグは堕落したフォーマリストなのだ。グリーバーグの優れたモダニズム論は、かれの『セザンヌ』に展開されている。それは浅い奥行きのイリュージョンと物理的絵画の間の弁証法的緊張として見事に分析されている。セザンヌの技法は、染み込みではなく、薄塗りと筆触のモザイクと塗り残しなのだ。津上氏はセザンヌに影響を受けているという。ならば、お節介だが、もういちど、グリーンバーグの『セザンヌ』を読み直すことを薦める。
2009.05.06[Wed] Post 01:15  CO:0  TB:0  -津上みゆき  Top▲

COMMENT

NAME

SUBJECT

BLOG/HP

PASSWORD

COMMENT

SECRET: ※非公開コメントにしたい場合はBOXにチェックをして下さい ⇒ 

SUBMIT: 送信 

TRACKBACK

津上みゆき(2) のトラックバックアドレス
http://petapetahirahira.blog50.fc2.com/tb.php/530-13d08b28
 ⇒ この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

Log in*/RSS*】  Design 「AZ+」Plugin Template...  Page Top▲
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。