この本は新入荷のコーナーではなく、経済の棚で見つけてきた。
田中秀臣氏は『エコノミスト・ミシュラン』を読んで知っている。最近はネット上で池田信夫氏と言い合いをしている。といっても名指しではないので、わたしが勝手にそう思っているだけだ。池田氏は弁護士の小倉秀夫氏とも論争(?)しているが、こちらは池田氏のほうに分がありそうだ。池田氏は小倉氏を病理学的な観察の対象としてはおもしろいと相手にしているが、ストーカーは無視したほうがいいだろう。
ところが、池田氏はリフレ批判になると、自分がストーカーまがいになってしまう。リフレ派は公共投資をすれば総需要喚起できるといっているわけではなく、デフレ下ではほかの財政政策や金融政策と組み合わせれば、すくなくとも短期的には景気刺激に効果があるといっているだけだだ。また、インタゲも闇雲にインフレにしろと言っているわけではなく、日銀はコアCPIなどを指標に適度な(2〜3パーセント)インフレ目標を設定しろということで、何もハイパーインフレーションにしろということではない。
池田氏はマクロとミクロは連続したものと考えるのが世界の経済学の常識だといって、マクロ政策であるリフレやインタゲをミクロで(たぶん)批判する。批判しているように素人には思える。(これについては記事『高橋洋一と池田信夫』参照)
『経済論戦』にも『ミシュラン』にもまだ池田氏の名前は出てこない。しかし、「構造改革主義」に対する批判は、「生産可能性曲線」をつかって詳しく書かれていて、『ミシュラン』ではわかりにくかった構造改革派の欠陥もよく理解できる。
池田氏が何故リフレ派に執拗に絡むのか、まさに原理主義的な創造的破壊主義者だからだ。その意味でわたしは池田氏の主張に半ば賛同する。田中氏によれば、驚いたことに健全財政を主張する財務省ばかりではなく、インタゲを否定する日銀も構造改革主義(精算主義)、すなわちデフレこそゾンビ企業を退治するチャンスだと主張していたらしい。もちろん財務省や日銀の構造改革主義は、自分たちの省益行益を守るためであり、池田氏のような原理主義的なものではない。
原理主義者の池田氏がなぜ日銀を擁護するような発言ばかりするのだろう。たぶん、日銀の構造改革主義的な発言にだまされているのではないか。いつも鋭い分析をしてみせる池田氏もリフレ憎しのために目が曇ったと思われる。
これは半昔前(はんむかしまえ)の本だが、いぜんとデフレを脱せない今こそ読むべき本だろう。政府紙幣の発行が良いのか悪いのか判らない人、定額給付金をもらって良いのか悪いのか判らない人、小泉構造改革は良かったのか悪かったのか判らない人、是非この本を読んでくさい。