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もとは美術展評のブログ 絵画と映画と小説と、そして哲学を少々

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町田久美展(西村画廊)★★★★★

アート度{1}:正統派である
目立つ度{4}:日本画に革命を起こすかもしれない。
コピー度{4}
美術度{4}:どうなるかわからない。
おしゃれ度{5}
絵描き度{4}:狂気は感じる。
恍惚度{0}:リトグラフの大量販売をはじめるかもしれない。 *
 町田久美展に行ってきた。
 ブログで、新人を発見してその作品を買うことが美術鑑賞の王道だとか、町田久美は東京都現代美術館の『日本画から/日本画へ』展から注目している等々、えらそうなことを言ったてまえ、ちょっと心配になってきた。
 町田久美の線を松井冬子の線と比較して、町田を評価しただけで、いくら評論家の意見なんか信用できないと強がっても、いざ、絵を買うとなれば、値段はマーケットが決めることだから、適正であろうとなかろうと、これだけはどうにもならない。
 心配なのは町田久美が村上隆の亜流ではないかということ、なにしろ「日本画から/日本画へ」の町田しか見ていないのだ。ともかく、JCBカードを用意して出かけた。
 画廊は賃貸オフィスを急拵えしたような雰囲気で、店主なのか店員なのか、男女二人が店番をしている。まずは、作品よりは店主店員の品定め、女性はダークのパンタロン・スーツ、男性もダークスーツに黒っぽいネクタイをゆるめて、どちらも、ややダサ目だが、普通の格好、町田の作品との兼ね合いもあるだろうし、たぶん画廊の従業員は派手な格好をしてはいけないのだろう。(キャッチ・セールの販売員は結構派手な格好をしているが)
 二人で立ち話をしていたが、そのうち女性は受付カウンターの奥に引っ込み、男性は私たちが見終わるのを待っている。予算内で、気にいったものがあれば、買うつもりなので、いつもより真剣な気持ちになっている。女房は『朝の前』が気に入ったのか何度もそこにたち戻って見ている。すでに売約済みの赤いマークが付いている。女房はそのことを知らない。
 「日本画から/日本画へ」以前のものとその後に描いたものが混じっている。私が期待した「不気味な線」の正体は現れていない。むしろシュールレアリスム的な主題が前面にでて、線の不気味さではなく、モチーフの不気味になってしまっているようだ。
 町田は澁澤龍彦によるマルキ・ド・サドの翻訳『淫蕩学校』の挿絵で認められたらしいが、その町田の挿絵の解説を書いた美術史家の山下裕二が、今回のカタログの解説に面白いことを書いている。町田の絵は一見して、ベルメールや四谷シモンを想起させるから、世の澁澤フリークたちがこぞって町田を賞賛するのではないかと予想したのだが、実際は、団塊世代が中心の澁澤龍彦フリークたちは関心を示さず、それより若い世代が町田を賞賛したというのだ。
 若い世代が町田を支持したのは、おそらく村上隆や奈良美智的なジャポニスムが町田の中にあると誤解したのであり、澁澤フリークたちが町田に興味を示さなかったのは、澁澤自身を含めて彼らフリークはエロティスムだけではなく、そもそも絵画というものを理解していないからだ。澁澤の絵画論は畢竟「色情狂の図像学」であり、彼が好きだというベルメールや四谷シモンの人形は、性的倒錯者のポルノグラフィーなのだ。
 町田久美にはそんなポルノグラフィーではなく本物のエロティスムがある。
 『儀式』という手を描いた絵がある。これは印を結んだ仏像の手に見えるのだが、手のひらから六本目の指が生えていて、その指を親指と中指薬指の三本で押さえているのだ。
 もちろんこれは色情狂の図像学から見れば、ファロスということになるのだろうが、その指の根本(ネモト)に金の指輪がはまっている様子は、たしかに避妊具を装着した男根に見えなくはない。なにやら私まで色情狂になったようだが、町田を理解するのにそんなものを持ち出す必要はない。
 子供ころに自分の指が6本あるのではないかと、何度も確かめた経験は誰にでもあるだろう。暗闇の寝床の中で、手の指が何本あるのか同じ手の指で確かめる。繰り返し触って確かめるけれど六本ある、明かりをつけて、目で確かめるのが恐ろしい。
 これは<目で見る視覚的身体>と<手で触る触覚的身体>の存在論的なズレを意味しているのであり、触覚的身体性の方がより原初的なのだが、それは未分化で構造化されないままであり、視覚的身体性(鏡像)に統合することによって回復できるのは仮象の全体性にすぎない。
 根元的な触覚的身体性を、他者の身体を通して回復しようとするのが性であり、エロティスムなのだが、身体の中で、唯一、ものの形を知覚できる触覚器官は指であり、性器はその能力がもっとも鈍い器官なのだ。
 以上のことを頭に入れて、町田の他の作品を見てみよう。
 『初対面』は一本の指を挟んで、二本の指先が向かい合っているのだが、一人の指では、こんな形を作ることは出来ないのだから、他人同士の指が触れ合っているのだ。これは町田久美の「アダムの創造」(ミケランジェロ)と考えたって悪いわけではない。
 もう一つ〈握る〉ということを『関係』という作品で見てみよう。ヘルメットを被った子供が、左手で母親の右手の四本の指を握り、右手は親指を中にして握っている。通常は母親が子供の手を引いて歩くのだが、この子は自分から母親の指を握って引いている。しかし、触覚は視覚と違って、相互的な感覚なので、触れられことなく触れることは出来ない。そこで、右手を親指を中にして握って自分を確かめようとするのだが、それは一瞬のことで、ただ触覚的自我が〈握る自分〉と〈握られる自分〉に分裂するだけなのだ。 
 町田の描く人物は、後ろ向きだったり下向きだったりして、目が描かれていないことが多い。視線が描かれているものも、『留守番』や『おともだち』のように、どれも手で触っているものを見ている。(『郵便配達夫』だけが今回の展示作品の中で異質である)
 『衣装』もそんな視覚と触覚が交差した絵である。町田の人物はたいてい幼児性が際だっているのだが、この『衣装』の人物は、幼児と大人、男と女が入り交じったような、とてもエロティックとはいえない裸体であり、その人物が臀部の皮膚を両手でつまんで引っ張っり、それをうつむいて見ているのだ。その引っ張られ伸びた皮膚が、身体から離され引きはがされ、触覚のない〈衣装〉となるのだが、その失われた触覚を、見ることで回復しようとしているのだ。
 今回の個展の中でもっともエロティックな作品は『入浴』だといえば、誰もが反対するだろう。しかし、ためしに風呂に入って、身を沈め、指や顔を少しずつお湯の中から出して見れば、わたしの言うことが分かるだろう。身体がお湯の水面から出ると、湯の中の皮膚と、外に出て空気に触れた皮膚は無感覚であり、ちょうどお湯と空気の境界、すなわち吃水線が触覚を刺激するのだ。目を閉じて、身体を水面から静かに出していくと、あるいは身体を水の中に沈めていくと、まるで触覚による身体のスキャンをしているようで、そのくすぐったいような感覚は全身に広がり、とてもエロティックな気分になる。
 これらの触覚的なものは、町田の魅力ではあるのだが、わたしが町田の線に期待した魅力ではなく、イラスト的物語的な魅力なのだ。今回の作品の線は、描写する線であり、足や手や頭の形を説明する線なのだ。町田の線には、描写の軌跡から逸脱しようという暗い欲望が感じられるのだが、その欲望は今回の展覧会ではイラスト的な描写のために抑圧されているように思える。
 また、ジャポニスム的なものや澁澤的なものの誘惑に抵抗できるかどうか、ネットをみれば、ファンクラブのようなものが、すでにあるらしく、そのうち、リトグラフを大量に作り出し、堕落の道をたどる虞もじゅうぶんにある。
 忘れていたが、価格表がないので、店主(?)に絵の値段を聞いたところ、いちばん小さい『きざし』が15万円で、「日本画から/日本画へ」に出品されていた一番大きい作品が300万円ということだった。日本画も号数で値段が決まるらしいが、値段は決して法外なものではなく、小品が15万円というのは、その製作にかけた労力に比べれば、安いものだ。画廊と半分半分の取り分とすれば、たったの7万5千円にしかならない。これではリトグラフ商法をはじめるおそれがおおいにありそうだ。
 初めに触れた若い男性店員(店主?)はこちらの質問にも丁寧に答えてくれて、とても好感がもてたし、女房が『郵便配達夫』が他の作品の線と違っていると言うようなことをいうと、店主は、『ユ郵便配達夫』は旧作に手を加えたもので、加える前の方が良かったと言ったのには、その率直さに驚いた。
 西村画廊はそれほどあくどい商売をしていないことは、このことでよくわかったのだが、我々の予算内の作品はすべて赤丸印だったので、結局購入することはできなかった。
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2006.06.25[Sun] Post 01:16  CO:0  TB:0  -町田久美  Top▲

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