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『現代アートバブル いま、何が起きているのか』吉井仁実

いったい誰がこんなタイトルの本を読むのだろう。といっても私も読んだのだが、もちろん買って読んだわけではなく、例によって図書館の新入荷のコーナーで見つけて借りて読んだ。アートバブルと言うけれど、コレクターという投資家が読むのではなく、『美術手帖』も読んでいる美大生という「起業家」がよむのではないか。

「はじめに」を読むと、著者の「仁実」という名前は、武者小路実篤につけてもらったと書いてある。父親が銀座吉井画廊の経営者だった縁だといい、小林秀雄や岡本太郎白洲正子との交流も書かれている。ここで、読むのをやめようかと思ったが、感想文を書くために、とばしとばしに最後まで読んだ。

著者は自分のことを画廊の主人ではなく、現代アートを扱うギャラリストだといい、カタカナのアート業界の話をするのだが、どれもどこかで読んだような販売戦略の話で、ギャラリストばかりかアーティストもキューレーターもプロデューサーもジャーナリストも、そしてもちろんコレクターもみんな結局は「美の商人」なのだ。当たり前のことだけれど、この本と村上隆の『芸術起業論』とは、強調の置き所は違うけれど、言っていることは変わらない。

それなら、画廊とギャラリーはどこが違うのだろう。『LRリターンズ』の11号に、荒木慎也が『日動画廊の事例に見る、コレクター・画商・美術家のパトロン  クライアント関係』というエッセイが載っている。和田事件で問題になった美術界の談合体質の根底には恩顧主義があると、政治学の方法を使って分析したものだが、恩顧主義のもとではコレクターはパトロンで、美術家はクライアントた。そして、そのあいだの利益を調整するブローカーが画商だという。

だから、価格は業者が談合で決める。見たことがないが、毎年、画家の号あたりの値段を載せた年鑑がでるそうだ。美術団体の所属とか受賞歴も影響するらしいが、どちらにしろ「身近な人物の利益を優先」させているには変わりない。それにくらべ現代アートの価格は最終的にはオークションで決まる。といっても、絵の善し悪しで決まるわけでも、コレクターの趣味で決まるわけでもない。コレクターは好事家ではなく、投資家だから、みんなが良いと思う絵に投資する。

それでも画廊の世界には、コレクターと画商と画家の役割分担があった。それぞれが趣味のようなものを持っていた。笠間の日動美術館にあるパレットのコレクションを 見ればその趣味はしばしば悪趣味にもなるのだが、現代アートのように屁理屈ばかりで趣味がないというのも困ったものだ。コレクターとギャラリストとアーティストが協力して戦略をねっている。かてて加えてキューレーター、ディレクター、プロデューサー、ジャーナリスト、まだまだ、美術史家、美学者、社会学者、哲学者、そしてもちろん美術評論家がいる。けれど、目利きは少なく、理屈や文脈がなければ作品はゼロだ。

絵画が株なら美人投票もいいだろう。自分が良いと思う作品ではなく、みんながもてはやす作品を買えばよい。みんなが良いと思う作品には文脈が必要で、文脈には理論が必要だ。だから作品のバブルの前に、ポストモダンという美術理論のバブルがあった。企画展バブルもあった。美術評論なんて「風説の流布」みたいなものだ。

文脈にはまったからと言って良い作品とは限らない。そもそも近頃の画家は絵を描く前に理論を組み立てる。つねに新しい文脈を考え、その理論にあわせて絵を描くのだから、絵の善し悪しではなく、理論の図解(イラスト)があるばかりだ。

この本が出版された9月にはすでにアートバルブは終わっていたのではないか。出版を企画したときはまだバブルだったのだろうか。2006年12月号の『VANITY FAIR』がアートバルブを特集している。恐ろしく下手くそな絵が高値で売れており、そんなばかげたことがいつまでも続くはずはないという雰囲気も伝わってくる。

短期的にみれば、美人投票も結構だが、長期的にみれば、結局は作品の善し悪しが価格を決めるのだ。『ヴァニティー・フェアー』の記事でニューヨークのギャラリストJeffrey Deitchがいっている。80年代で一番高く売れたアンゼルム・キーファーは、いまではオークションに出しても売れないおそれがある。キーファーの最高の傑作でも一億で売れれば御の字だ。それなのに、Lisa Yuskavage(48)のソフト・ポルノの作品が同じ価格で落札される。「sex sells」というわけだ。(このあたり村上人気にもつながる話だ)

というわけで、アートバブルに気をつけましょう。

2008.12.13[Sat] Post 00:20  CO:0  TB:0  -書評  Top▲

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