ルシアン・フロイト
森美術館の『アートは心のためにある:USBアートコレクションより』でルシアン・フロイトの《ダブル・ポートレイト》を見た。以前、西村画廊でフロイトのエッチングを見たことがあり、油絵をみたいと思っていたので、一枚だけだったけれど満足した。そしたら以下の記事が出ていた。
「英国の美術家ルシアン・フロイド氏(85)の裸婦像が13日、競売にかけられ、3360万ドル(約35億3700万円)で落札された。 競売商クリスティーズによると、生きている作家の作品としては、史上最高の額という。この作品は、1995年に描かれた「眠る給付金管理者」。これまでの最高額は、昨秋に競り落とされた彫刻についた2360万ドルだった。落札者は明らかにされていない。フロイド氏は、ユダヤ人精神分析学者フロイトの孫。ベルリンに生まれ、ナチスを逃れて英国に移住した。」(YOMIURI ONLINE5/15) 2360万ドルの彫刻というのはジェフ・クーンズの《Hanging Heart》である。外国の新聞記事のコメント欄は、七ポンドでも買わない、ダイエットクラブのホールに掛ければ良い、投資のためだろう、1950年代のちゃんとした海の風景画のほうがましだ、吐き気がする、とか悪口がいっぱいだけれど、わたしは感動したが、どうなんだろう。高く売れるということは、この絵が傑作だと思っている人はわたしだけではないということだ。 このぐらい太った女の写真はネットで見たことがあるけれど、気分が悪くなった。世に「デブセン」というものがあって、そういう太った女に欲望を感じる人間がいるらしい。ルーベンスの裸体画の女たちもそうとうに太っているが、もちろん当時はそのぐらい太っている方がエロティックだったのだ。 フロイトの絵はどうみてもエロティックとはいえない。しかし、気持ちわるいわけではない。美しいとさえ言える。写真なら気持ち悪いものが、絵だとなぜ感動するのだろう。フロイトの絵はリアリズムだというが、写真のリアルな描写とはちがう。同じなら、写真を見たときと同じように気持ちが悪くなるはずだ。 気持ち悪くなる人はたぶんそこに欲望の対象になるはずの女を見ている。写真を見るときと同じ視線で絵を見ているのではないか。それにくらべ、感動する人は写真とは違う視線で絵を見ている。そう考えなければ感動の説明がつかない。 その視線の違いは、たぶん図像の三層構造からくるものだ。 TRACKBACK
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