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椹木野衣(1)

椹木野衣のナカグロ的思考

 だいぶ前に椹木野衣の『日本・現代・美術』の感想文を書くと約束したことをすっかり忘れていた。しかし、藤枝晃雄の「批評家としての芸術家」(芸術/批評3号)を読んで、そのことを思い出した。といっても、その約束を果たそうというのではない。
 そうではなく、そのときじつは感想文を書きかけていて、その中で、本のタイトル『日本・現代・美術』の「・」(ナカグロ)をちょっと揶揄したのだが、このナカグロのことで、なるほどと思えることが、藤枝の「批評家としての芸術家」にあったので、それを忘れないうちに書いておこうと思ったのだ。
 以下は、そのとき書きかけた『日本・現代・美術』の感想文である。 

椹木野衣の『日本・現代・美術』を読む
 読んだといっても、図書館で借りて読んだのだが、それというのも、だいぶ前に椹木野衣の「シミュレーショニズム」を読んで、その内容のお粗末なことに驚いた経験があるからだ。なにしろ、新しいアートであるらしい「シミュレーショニズム」の技法と実例をポストモダン風(?)語彙と時代背景というより風俗世相を挟みながら、えんえんと解説しているだけで、だからどうしたのかサッパリと要領を得ない書物なのだ。 
 それ以来、椹木の書いたものは避けて読まずに来たのだが、上田高弘が『モダニストの物言い』で椹木野衣の『日本・現代・美術』について触れていたので、読む気になったのだ。もちろん上田は『日本・現代・美術』を褒めているわけではなく、日本の現代美術史を扱っていながら、藤枝晃雄を無視しているのは怪しからんといっているのだが、それなら椹木が藤枝をどうやって無視しているのか、読んでみようと思ったのだ。
 読んだけれど、今度もさっぱり分からなかった。出だしからして分からない。椹木は、いきなり『日本現代美術』を三つの要素に還元すると宣言するのだが、じっさいにやっていることは、ただ「日本現代美術」という複合語を「日本」と「現代」と「美術」の三つの単語に分けているだけで、還元とは何んの関係もない。
 そして、あとは、そんなこととは関係なく、時代背景で説明したり、美術評論家や作家の言葉を引用したりしながら、キャッチフレーズをちりばめて、「逆に言えば、逆に見れば」と、全然逆になっていないレトリック振り回す。ところどころ、ウガチ(あるいはウガチ過ぎ)などがあって、ディレッタントには楽しめるのかもしれない。
 上田高弘は椹木のレトリックを褒めているが、本当にそう思っているのだろうか。それとも、美術ジャーナリズムの権威(?)におもねっているだけなのだろうか。
 さて、そういうわけで、私の日本現代美術史に対する無知と相まって、あまりはっきりしたことは言えないが、『日本・現代・美術』は藤枝晃雄というよりクレメント・グリーンバーグ以降のアメリカの抽象画を無視しているのだ。
 グリーンバーグ、あるいは、抽象表現主義は美術(fine art)の領域にとどまっていた。しかし、グリーンバーグのそれを否定することから始まったポップ・アートを擁護する椹木は、当然グリーバーグや藤枝を無視することになる。

 というところまで書いたのだが、何の分析にも感想にもなっていない。最後の方はしどろもどろになっていて、僕自身がグリーンバーグもフォーマリズムも理解していないのが見え見えで、結局なぜ椹木が藤枝を無視したのか分からずに、途中で、ほっぽり出してしまったのだ。
 その理由が、藤枝の「批評家としての芸術家」を読んで判ったというなら、面白いのだが、そうではなく、ただ、藤枝が椹木の岡本太郎論『黒い太陽と赤いカニ』の中にあるナカグロ的思考を批判しているところがあって、それがわたしには痛快だったということだけなんだ。(大騒ぎしてすみません)
 藤枝は岡本太郎の対極主義について書いている。対極主義というのは、合理性と非合理性の二つの極の対立のことで、当時、岡本が滞在していたパリの美術界に「抽象とシュルレアリスムの愛憎関係」があったため、合理性は抽象、非合理はシュルレアリスムに当てはめて考えるという困った芸術の見方が生まれてしまった。
 そして、この誤った対極主義の図式で椹木は抽象表現主義を解釈する。まず、抽象表現主義を抽象と表現の二つに分断(還元?)して、抽象を幾何学的抽象に、表現をシュルレアリスムに置き換えて、二元論的に解釈する。そして、この二元論的「抽象・表現」主義は、抽象芸術とシュルレアリスムを統合してヨーロッパに対抗しようという、文化的後進国のアメリカの戦略だったというのだ。なんでもかんでも東西冷戦や湾岸戦争、それから五十五年体制を持ち出すのは椹木の十八番なのだが、この「『抽象・表現』主義」というナカグロで区切った表記が椹木自身のものかどうかは判らない。藤枝が抽象表現主義をAbstract Expressionismではなく、Abstraction Expressionismとする間違った二元論的見方を示すために、後者の日本語訳として、藤枝自身が「抽象・表現」主義とナカグロを入れて表記したのかもしれない。それならそれで返って興味深いし、どちらにしろ、藤枝が椹木のナカグロ的思考を指摘し、批判していることに変わりはない。
 この二元論的な図式に対する藤枝の批判はここで詳しくは述べない(ポストモダンが非難している抽象は幾何学的抽象であって、抽象表現主義にはあてはまらないと、いつものように藤枝はくりかえし述べている)。そのかわり、椹木のナカグロ的思考について面白ことが書いてあるので、それについて書く。以下、藤枝の「批評家としての芸術家」の注(12)からの引用。

 「椹木が抽象=抽象、表現=シュルレアリスムとするのは誤りであって、この対立する語を結びつけた名称に矛盾があると見なすのは無意味である。」

 文中の「矛盾があると見なす」の主語はもちろん椹木だろうが、それを藤枝は無意味だと喝破している。無意味なのはあたりまえだ。椹木は還元するなんていうが、ただ前の名詞が後の名詞を形容しているだけの複合語を勝手にナカグロを付けて二つに分けて、それを矛盾だとか、逆に言えばとか、一人で勝手に騒いでいるだけで、そこには二項対立も弁証法ももちろんありはしない。
 椹木の『日本・現代・美術』の書評をいくつか読んだ中に、表題の「・」ナカグロを、日本が「悪い場所」であることを的確に表していると言って、賞賛していたものがあったけれど、ホントかいなと疑ったが、自信はなかった。しかし、藤枝晃雄の「無意味である」という言葉を聞いてすっきりした。この断言は「抽象・表現」のナカグロだけではなく、『日本・現代・美術』のナカグロを含めて、椹木のナカグロ的思考は全部無意味であると勝手に拡大して受け取ることにする。
 それにしても、藤枝の罵詈雑言が出てこないので少し寂しい気がしたのだが、同じ注(12)を注意して読むと、罵詈雑言どころかもっと酷いことが書いてある。

 「椹木は、ニューヨーク近代美術館の当の動向の展示室にいっても抽象芸術とシュルレアリスムが一つの画面のなかに「統合」された作品は見当たらないという。当然である。」
 
 「無意味である」の次が「当然である」とは、藤枝晃雄も厳しいなぁ。とにかく、これは椹木が自分の美術評論家としての鋭さを自慢するつもりで書いたのだろうが、あに図らんや、藤枝が「抽象・表現」の誤りをさんざん指摘したのを読んだあとでは、鋭さどころか椹木の間抜けな姿が彷彿として、    滑稽を通り過ぎて悲惨な感じがする。絵がちっともわかっていないことがばれちゃったのだから、ふつうなら評論家生命が絶たれるところだが、まあ、例によって例のごとくなのだろう。それにしても、椹木は、「抽象・表現」というナカグロ以前は、抽象表現主義の絵をどんな風に見ていたのだろう。たぶん椹木は抽象表現主義だけではなく、絵というものをまったく理解できないのではないか。理解できないから、あるいは楽しめないから、むしろ自由自在に、生半可な知識を駆使したレトリックが展開できるのではないか。
 なんとなく、椹木が藤枝を無視した理由が判ってきたようなきがする。

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2007.05.11[Fri] Post 00:53  CO:0  TB:0  和田盗作事件  Top▲

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