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もとは美術展評のブログ 絵画と映画と小説と、そして哲学を少々

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『日本の美術館名品展』(東京都美術館)2:ピカソ

パブロ・ピカソ:『ドラ・マールの肖像』

国立新美術館の『巨匠ピカソ』展(08年)で別の『ドラ・マールの肖像』を見た。それは直線的だったけれど、今回の『ドラ・マールの肖像』(徳島近代美術館所蔵)はちょっと円みがあってイラスト風で、分かりやすい肖像画である。 国立新美術館では、ほかに、パステル・カラーで描かれた『マリー=テレーズの肖像』も見た。どれも、横顔と正面の顔が合わさった女の肖像画である。

これらは肖像画は、もともとはキュビスムの多視点描画から来ているのだが、それが立体の平面への解体というモダニズムの意味を失って、単にピカソのシンボルという図像学的意味になっている。

ピカソは、赤塚不二夫の漫画に出てくるピカソのキャラクターを自ら作った。村上隆のキャラクターDOBくんのようにいろいろなバージョンがある。ピカソが自作を模倣しはじめたということだ。もちろんピカソは「これはポップだ」と言い張ることもできる。いずれにしろピカソは堕落の道を歩み始めたように思える。

ピカソは顔のもつ魔力をキュビスムによって解決することはできなかった。しかし、マチスは「へのへのもへじ」によって顔の象徴性表情表現を克服した。その意味では、ピカソはマチスを超えることはできなかった。

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2009.05.25[Mon] Post 23:20  CO:0  TB:0  -ピカソ  Top▲

『巨匠ピカソ』展(国立新美術館・サントリー美術館)

前回は『セザンヌ主義』で、今回は『巨匠ピカソ』である。セザンヌとピカソを論じるということは、モダニズムの歴史を論じることだから、私の手に余る。いま、デ・クーニングの《女》のことでグリーンバーグを読んでいる。キュビスムとか抽象画については、そのうち書くつもりだ。

そういうわけで、『巨匠ピカソ』展については、とくに面白かった作品をあげておく。どれも小品である。

一番面白かったのは、《海辺を走る二人の女》(1922年)だ。突然、向こうから目に飛び込んできた。とても大きく見えたが、じっさいは32.5×41.1cmの小さな絵だ。向こう側の女の左手が前方に長く伸び、黒い髪がなびくというより、房になって後ろに引っ張られるように伸びている。人物はハッチングで陰影が描かれ、砂浜には影がある。背景の海と空はほとんど同じ明度の青だ。

もう一枚は、《マリー=テレーズの肖像》である。ピカソのにはめずらしく淡い中間色で、唇は黄色で肌は薄い青だ。帽子もニットの服もストライプで、顔はもちろん正面と横顔が一緒になっている。初期の分析的キュビスムのように直線ではなく、曲線で描かれているので、女にはふくらみがある。直線は平たい面を作るが、曲線は立体感を生む。女の背後に見える壁と床と天井が直線で仕切られて平面的だが、その直線は同時に歪んではいるが、線遠近法の室内空間の深い奥行きを生み出している。目を楽しませてくれる絵だ。

もう一枚は『巨匠ピカソ』展ではなく、その帰りに寄ったブリヂストン美術館の『都市の表象と心象-近代画家・版画家たちが描いたパリ』展で見た。《生木と枯木のある風景》だ。次の展示室に移る端の壁に掛けてあり、「あれぇー変な絵がある、ルソーみたいだ」と一瞬、思ったけれど、すぐに家がキュビスム風で、全体が平面的な印象に変わった。切り抜きのような雲、山、家並み、池、草地、樹木がコラージュのように重ねられている。キャプションをみるとパブロ・ピカソだった。

以上の三作品が目をひいたのは、たぶんそれが小さな具象画だということにもありそうだ。小さい絵は全体が一挙にとらえられるし、近くで見るので絵具もよく見える。また、キュビスムでも新古典主義でも、その誇張やゆがみがほどよく押さえられていて、見ていて飽きない。さらに、小さい図像客観が大きな図像主題にみえるので、それだけ絵に没入することが容易になり、絵を見る楽しみが強まる。もし、大きな絵なら、図像客観と図像主題の大きさが重なり、我々の想像身体が現実の身体と重なって、絵画空間に没入することが妨げられてしまう。

図像主題をみるということは、絵画空間と観者の身体空間とが切断されるということである。それがいわゆるグリーンバーグの歩いて入れるイリュージョン空間であり、歩いて入るのは観者の知覚身体ではなく、想像身体なのである。

(ごちゃごちゃになったので、ひとまず遅いので眠ります。明日、読み直して、たぶん支離滅裂だろうから、かきなおします。お休みなさい。)

2009.01.27[Tue] Post 21:38  CO:0  TB:0  -ピカソ  Top▲

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