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大谷有花が絹谷幸二賞を受賞

大谷有花が絹谷幸二賞を受賞したと産経ニュースが伝えている。絹谷賞は毎日新聞が主催しているのだから産経ニュースが取り上げるというのはこの業界ではあまりないことだ。(和)のサインがあるのだから、記事を書いたのは、同じ紙面で『VOCA』の展評を書いている渋沢和彦だろう。

渋沢は、受賞者の作品が見られないのは残念である、小規模でもいいから展覧会をして、VOCA展と競え合えばいいと言っている。正論である。両展に傾向の違いがあるようだが、競いあうには、両者のあるていどの質の高さが必要だろう。

両方の選考委員を兼ねている本江邦夫の絹谷幸二賞選評『描く喜びを提示』から大谷有花の箇所を引用する。

この二つ(絵画と書物)を、生来の精妙な感性と透明感あふれるマチエールによって「開かれた本を描いた絵」として一つに結びつけ、宇宙的な別次元をまさに切り開くこと で、描く喜びを提示したところに、大谷有花さんの独創があります。(毎日jp)

本当に大谷有花は独創的なのだろうか。産経ニュースに掲載されている受賞対象作品《黒い本ー花の対話ー》を見ると、開いた本から花が外に飛び出している絵なのだが、これは私たちがディズニー映画でさんざん見せられたアイディアだ。ただ、大谷は「絵の中の絵」のトリックにちょっとした工夫を付け加えて、イラストをあたかも芸術作品に見せている。

まず、開いた本の黒い縁がキャンバスの縁すれすれに近づき、背景の表面と本の厚みのある面とが分離される。この技法はオリッツキーがつかっている。他方、背景とページの表面が同じキミドリに塗られることで、ページの表面とキャンバスの表面が同じ平面に重なる。花は壁の模様になり、ソファーの模様になり、そして、本から飛び出た花が、ソファーの下に潜り込み、ページの間に挟まっている。

もちろん、これらは図像の重層性を利用した一種の錯視であって、目新しいものではなく、グリーンバーグが問題にした絵画の物理的平面と図像空間のイリュージョンの弁証法とは異なるものである。もちろんイラストとして面白い作品ではあるが、本江邦夫の「宇宙の別次元を切り開く」というのはいくらなんでも大袈裟すぎるだろう。

そんなことより、本江邦夫と大谷有花の関係は画家と評論家の関係を超えているのではないか。本江は多摩美の教師として大谷に近づき作品を安く手に入れ、美術館館長として作品を購入し、美術賞の審査員として、第6回 昭和シェル石油現代美術賞で自分の名前を冠した賞を与え、2003年VOCA奨励賞、そして今回は絹谷幸二賞を、それぞれ審査員の一員として与えている。もちろん、目利きと優秀な作家の幸運な出会いなのだろうが、評論家が自分の推薦する画家の作品を購入するというのは、やっぱり疑われてもしかたないのではないか。

まあ、そんなことは実は私にはどうでもいいことだ。私が腹がたつのは、美術展評を書き始めた頃、東京都現代美術館の「ナディッフ」で3800円で購入した本江邦夫の「現代日本絵画」のことだ。たとえば大谷有花の個展をみて、『現代日本絵画』の大谷のところを読むと、チンプンカンプンのことが書いてある。

絵画は絵画によって絵画である。これはつまり、絵画にとって絵画は自己であり他者であるということだ。今日の絵画を真に養っているのは、絵画を超えたもの、いうならばメタ絵画的な容器、いやむしろ母体(マトリックス)あるいは思考の回路であり、「私」とはその最小単位の別称である。これを画家に即して言うならば、絵画とは画面に対する無数の反問であるということかもしれない。(『現代日本絵画』P104)

わしにはまったく理解できなかったけれど、まったくのデタラメとも考えられなかった。なにしろ、彼が自分でかいていることだが、日本の美術界では「絵画の専門家」ということになっているからだ。しかし、いまでは本江の言っていることはまったくの無意味なレトリックだと思っている。

それはともかく大谷有花は、兎のキャラクターやキミドリとピンクの色合わせは、イラストとしてそれなりに完成度が高いし、そういう意味では、同じように漫画的な絹谷幸二の名前をつけた賞にふさわしい。


『本江邦夫の絵画論を批判する』へ
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2010.03.24[Wed] Post 22:37  CO:0  TB:0  -大谷有花  Top▲

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