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ホルスト・ヤンセン展 埼玉県立近代美術館★★★★☆

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アート度{0} :モダニズムの評論家はまるで興味をしめさない。

目立つ度{4}:エゴン・シーレなど、このような線の持ち主がいないわけではない。また、アール・ブリュ、あるいは病的なところがあるので、逆に目立たないおそれもある。枯れた花や死んだ動物は題材としては古くさい。

美術度{5} :単純な線や図形の繰り返しなど、知的障害者の特徴があるが、そうではない。ヤンセンの技法はまったく知的なもので、よく訓練されコントロールされた技術のなのだ。

おしゃれ度{3}
:狂気だっておしゃれです。うまくやれば{5}になるでしょう。ヤンセンの春画をさりげなく掛けておくなんて、おしゃれだと思うんだけれど。

絵描き度{5}
:絵描きになることは狂気になることです。


Horst Janssen Selbst


Horst Janssen Selbst


 ベン・シャーン以来の埼玉県立近代美術館である。北浦和の出口をでると、雨が降り始める。空がきゅうに暗くなり、稲光がする。美術館へ急ぐ。グレコとボテロの彫刻を通り過ぎて、何とか濡れずに到着。  第一室に入って、いきなり銅版画に圧倒された。狂ってる、どう見たって狂ってる。Klee(銅版画)の三倍狂ってる。

  ところが、それが美しいのだ。横浜美術館で見た長谷川潔のメゾティント(マニエール・ノワール)など児戯に等しい。ヤンセンの黒はメゾチントのようなビロードの黒ではなく、激しく強い黒だ。線も太いの細いの、長いの短いの、アクアティントの濃度も千差万別、見ていてあきない。ヴンダーリッヒに銅版画の腐食法を習ったというが、習作もなくいきなりそんな完成度の高い作品を作ったのか、にわかに信じがたいが、それでも、鋭くとがらした鉛筆で書いた素描はデューラーの再来かと言われたのだから、グランドをひいた銅板の線描はお手の物だったにちがいないが、それにしても、エッチングは描いたはなから絵が見えるわけではないのだから、どうしたって偶然に任せなければならないことも多いはず。なのに、なんと見事な仕上がりぶりだろう。

 これまでも沢山の銅版画を見てきたけれど、大抵は古くさい手法の繰り返しか、こけおどしの珍奇な手法の組み合わせばかりで、どうも出来上がった作品はせいぜい良くてコラージュまがいのものばかり、いいかげんうんざりしているところに、この古典的にも美しいヤンセンの銅版画、感動のあまり、しばらく呼吸を整えるしまつ。

 木版画では、鉛筆画や銅版画とはまったく別の線を作り出す。あらかじめ全面を黒でプリントしておく、黒い紙に版画したものならたくさんある。しかし、わざわざ下塗りのように紙を全面黒くした版画家がいるだろうか。いるかも知れない。しかし、それで、まったく別の世界を作り出した版画家はヤンセンが初めてだろう。凸版の版画が凹版に変わるのだ。まるで手品だ。木版画特有の見すばらしさはなくなる。あれほど激しく彫った棟方志功でさえ、免れることができなかった陰陽逆転したかのごときスカスカ感がなくなっている。黒い紙にプリントしたのとは違う、塗り重ねられたような厚味の有る黒だ。黒がかすれたように浮き出ている。美しい黒だ。  しかし、次第に衰えていくようだ。素描の力は相変わらずすぐれているものの、知性の衰えは隠しようもない。写真や絵をもとに有名人の肖像画をかく、北斎に学んで風景画を描くも、細部にこだわって、構図に力がない。空白と省略が生きていない。
 
見終わって、展示室の外に出ると、横に別の展示室があり、掲示板に、青少年の教育に悪影響のおそれがあるから注意しろとある。中にはいると、北斎の影響を受けたという、男女交情の場面を描いた水彩画「フュリス」が並べてあり、さらにその奥に北斎の春画がおそるおそる展示してある。おそらくこの展覧会を企画した学芸員がぜひとも北斎を並べたいと、何度も会議を開いたすえのことだろう。県立美術館としては英断といえる。しかし、並べた結果何か面白いことがあるかといえば、研究家には興味があっても、素人に何の興味も起きない。

 「フュリス」もまるでエロティックとはいえない。登場する女たちは、明らかにエゴン・シーレの方が魅力的といえる。  この世界はそれぞれの好みがあるから、本当のところは私にはわからない。しかし、北斎ばかりではなく、性的倒錯の分類や図像学やレオナルドの解剖図まで持ち出して説明されても、だからといってエロティックな気分になるわけではない。ヤンセンの「春画」の魅力は、その滲んだ水彩の明るい色だ。その女の肌は色鉛筆でもパステルでもだせない。藤田嗣治の白い肌より美しい。背景の黒も版画とは違う黒である。鉛筆画、銅版画、木版画、色鉛筆パステル画と次々と新しいメデュウムを使い、そして水彩で、やっとのことで色彩をえたようなきがする。

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2006.05.01[Mon] Post 19:09  CO:0  TB:2  ホルスト・ヤンセン  Top▲

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